『本について』

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僕は読書家だと思います。基本的に家で読む用の1冊、これはハードカバーや大判のもがメインで大体就寝前だったり、入浴中に読みます。もっとも、眠くなって何冊か水浸しにしてしまいました。移動用に1冊、これは文庫本や新書で最悪ポケットに突っ込んででも持って出かけます。東京以外のライブなど移動時間が多い時は気分転換も兼ねて2,3冊。おかげでリュックが変な形になってしまうことも多いですね。
 気づけばこんなペースで読書してますが、それでも最近は読書スピードがだいぶ落ちました。2010年に脳梗塞で倒れて以来、左目が失明してしまったからです。それまではパッパッとページをめくるのが快感だったのですが、どうしても行きつ戻りつしないと内容が頭に入ってこなくなりました。じっくり読むようになって良い面があるのですが、おかげで積ん読本が山脈のようになってます。
 本を読む楽しさを実感したのは最初の記憶は、5歳の頃です。父が良く宮沢賢治を寝る前に読んでくれました。「風の又三郎」「セロひきのゴーシュ」「よだかの星」「注文の多い料理店」「銀河鉄道の夜」。こうした物語をわくわくしながら聞いていました。特に「楢ノ木大学士の野宿」が大好きで、これを自分でも読みたいと思ったのを良く覚えてます。最近、7歳の娘に読んであげたのですが、思いのほか言葉使いが難解で手間取りました。父は実に上手に読んでくれていたのだと思います。宮沢賢治の本で字を覚えた側面もあると思います。どっどどどどうど、どうどど・・・風の又三郎の冒頭、すっぱいかりんもふきとばせ。
 読書に本格的にはまったのは小学校6年生のとき。エラリー・クイーンがバーナビー・ロス名義で書いた『Yの悲劇』があまりに面白く、読み始めたら本を閉じる事が出来ずに一気に読み終えてしまい、興奮が冷めないので結局その前編である『Xの悲劇』を読み始めてしまいました。家には両親の本が大量にあり、その中から推理小説を薦めてもらって読み耽るようになりました。クロフツの『樽』『フレンチ警部最大の事件』、メースンの『矢の家』など。書いていて思い出したのですが、僕は10歳まではロンドンにいたこともあってコナン・ドイルのシャーロック・ホームズ・シリーズは英語で読んでました。『バスカヴィル家の犬』など。あとはロアルド・ダールの『ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』なども英語で楽しんでまし た。日本の推理小説はだいぶ後になってから松本清張『ゼロの焦点』『眼の壁』『点と線』はかなり興奮して読んでました。横溝正史はもっと大人になってからでしたね。
 中学、高校時代は歴史ものにも興味を持ち、吉川英治、司馬遼太郎、海音寺潮五郎、陳舜臣などを読んでいました。三国志好きが高じて三国志演技に飽き足らず、三国志人名辞典にまで手を出してました。島崎藤村『夜明け前』を高校3年のときに読んでいたら、ちょうどその年のセンター試験で出題されてスラスラ解けたのも読書のおかげですね。
 漱石、鴎外、芥川、三島といった巨匠の作品も手あたり次第に読んでいました。開高健『日本三文オペラ』、安部公房『他人の顔』など強い印象を受けましたね。文章にリズムがあり、脳の中でグルーヴしていく様子が楽しいと思いました。カフカ『変身』『城』、カミュ『ペスト』なども好きでしたね。海外の翻訳作品はやはりイメージですね。頭に描かれるイメージが刺激的です。
 20代はラッパー稼業に追われて読書の記憶が薄いのですが、ヒップホップを通して根本敬の諸作品に出会いました。『因果鉄道の旅』『人生解毒波止場』はまさにバイブル。30代になってからはノンフィクションものを多く読むようになってました。『俺がJBだ!』とか『俺!勝新太郎』といったぶっ飛んだ伝記、魚住昭、辺見庸、森達也といった人たちの鋭い視点から書かれた文章は脳の栄養になります。
 最近面白いと思ったのはビデオジャーナリストの神保哲生氏が推薦していたポール・ロバーツの『「衝動」に支配された世界 我慢しない消費者が社会を食い尽くす』。現実への気づきが満載でマトリクスのピルのような本です。自分たちが今いる世界の構造がむき出しになっていく快感が味わえます。もう一冊は、高橋ヨシキさんに薦められたリチャード・ドーキンス『神は妄想である 宗教との決別』です。最近の僕の物事の考え方の基礎はこの本からの受け売りばかりな気もしますが、とにかく知的探求心をとことんまでくすぐってくれます。咀嚼するのも大変でまだ全然理解出来ていない気もするので今後も読み続けると思います。
 まだまだ読んでいない面白い本がたくさん目の前に積んであります。読書の旅は一生続くと思います。
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ダースレイダー DARTHREIDER a.k.a. REI WORDUP 1977年、パリ生まれ。東京大学文学部中退。在学中の98年からラッパーとして活動し、2001年メジャーデビュー。2014年より9SARI GROUP所属。10年に脳梗塞で倒れ、後遺症で左目を失明。以来、眼帯がトレードマークに。 ドラム、ベース、ヴォーカルによるスリーピース・ファンクロック・バンド、ベーソンズ(THE BASSONS)でも活動。 ラッパーやDJらでつくる「クラブとクラブカルチャーを守る会」の一員として、ダンスクラブを規制する風俗営業法の改正運動にも深くかかわった。11月に刊行された『ディスク・コレクション ヒップホップ 2001-2010』(シンコーミュージック)を監修。来年1月8日に東京のディファ有明で開かれるMCバトルの大会「キング・オブ・キングス」をPRODUCE。
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